AgileSEA 記録 Developing Your Organization’s Agile Coaching Capability - Lyssa Adkins
Agile SEA に参加して、パトロンチケットの特典で録画を見られたので記録していく。
Thank you all speakers and organizers to have such great event!
Developing Your Organization’s Agile Coaching Capability - Lyssa Adkins
1日目KeynoteはCoaching Agile Teamsでお馴染みのLyssa Adkinsによる講演。
オープニング
多くの人は組織を機械のようなものと捉えているが、実際は熱帯雨林のようなもの。制御しようと思っても制御できるようなものではない。 (最近チームは明治神宮の森という表現をしてきたので、個人的にはおんなじこと考えてる人がいたと思って嬉しい気持ちになった。)
Teal組織とAgileManifesto
組織の進化という点において参考になるのはTeal組織。組織の段階を表す共通言語としてTeal組織の用語は使いやすい。 アンバー・オレンジ・グリーン・ティールと進むにつれて、マインドセットや必要なアクションは複雑なものになっていく。 「組織」を主語に語るのは、誰かに何かを強制したり、まだ準備ができていないのに次の段階に進もうとしているので、気をつけないといけない。
Teal組織における各段階とアジャイルマニフェストと12の原則をマッピングしてみると以下のようになる。
組織の段階 | 重要にする価値 | マニフェストの文言 |
---|---|---|
ティール | 影響 | マニフェスト全体。特に 計画に従うことよりも変化への対応を |
グリーン | 人 | プロセスやツールよりも個人と対話を 契約交渉よりも顧客との協調を |
オレンジ | 結果達成(市場価値、シェア、利益率) | 包括的なドキュメントよりも動くソフトウェアを 契約交渉よりも顧客との協調を |
アンバー | 伝統 | プロセスやツールよりも個人と対話を 包括的なドキュメントよりも動くソフトウェアを 計画に従うことよりも変化への対応 これらの左側に価値を置いている ここで非アジャイルマニフェストを思い出した |
Coachingの必要性がたかまっている
2020年のAgileSurveyによると、組織へのアジャイル適用に対して障壁と思われているものの第1位は組織文化。スケーリングアジャイルの成功についてみてみると、2017年のAgileSurveyでは,スポンサー(エグゼクティブ(役員)クラス)の協力もさることながら、社内コーチの重要性がキーポイントとして挙げられている。
一方、こんな現場もあるかもね。
ScrumAllianceはAgileCoachの認定をはじめたし、ICAgile.comではAgileCoachへの道のりを紹介するマテリアルを発表するなどしていて、世界的にもその重要性が認められ始めている。
組織においてアジャイルコーチの能力を開発するには?
組織の仕組みとして取り組む領域は以下の5つ。
能力開発の道のりを提供する |
知識・スキルのトレーニングに投資する |
コンピテンシーを高めるプログラムに投資する |
十分なメンタリングと練習の機会を提供する |
コアとなるマインドセットの更新を支援する |
今日のお話では特に「能力開発の道のり」について詳しくみていく。 たとえ研修を受けたとしても、研修で得たものを活用して、活用するにはたくさん練習が必要。 なんでかというと、そこで習うテクニックやツールは必ずしもアジャイルの分野からきたものではなかったりするので、自分にインストールされている古いOSの上で最新のアプリを動かそうとするような状況のように、スムーズに行動に移せないことがあるかもしれないから。 コーチはメンタルモデルというOSの上でたくさんのアプリを動かすことができるようになる必要がある。そしてそのアップデートにはちょっと時間がかかるかもしれない。
アジャイルコーチングの能力開発
同心円の中心に自分自身。外側に順に個人、チーム、プログラム(複数チーム)、組織という範囲を考える。 EnterpriseAgileCoachへの道のりは以下の階段を1段ずつ登っていく。
Step1. Agile Team Facilitation
- 中心からチームの範囲をカバーする
Step2. Agile Coaching
- 中心からプログラムの範囲をカバーする
Step3. Enterprise Agile Coaching
- 同心円全ての範囲をカバーする
どのレベルにおいても言えるのは、「self-management がどのレベルにおいてもスキルのキーとなる」ということ。
Step1,2をもうちょっと詳しく
詳細はICAgile Learning Roadmap Agile Coaching Track Version 2.0参照のこと。
Step1は19、Step2は46の目標がある。
この道のりは大体12-18ヶ月くらいかかる。 本を読んで適用してはい。おしまい。というものではなく、様々な文化のある状況に合わせて自分のOSをアップデートしていく必要が出てくるから時間がかかる。
よくあるOSのアップデート
ミーティングを”運営する”から”ファシリテートする”への変化
- ハブとスポークのように自分が会議の中心になって一人一人とコミュニケーションして会議をまとめるのはファシリテートではない。
相互作用を"もたらす"から"ファシリテートする"への変化
- チームのメンバー同士が協調して会話できるようにファシリテートする。
- 自分自身が会議に”貢献”していないように感じる人が多く、この段階はかなり大きなステップ。
まず最初の段階として、Agile-Leanの実践者としてのスキルとファシリテートのスキルを身に着ける。 表面的にさらうのではなく、その原則と価値の本質に迫る程度の理解が必要。 ここまでができるようになると、チームの機能とチームのプロダクトフローが改善してくる。そして、自然と責任とコミットメントが生まれてくる。ここまでがStep1。
問題解決中毒を克服して、意図的に介入することを選択する
Step2ではプロフェッショナルコーチングのスキル、乞われた時にサービスとして教えること、メンタリングすることが提供できるようにならないといけない。 このレベルまでくると組織全体の能力が向上し、組織全体のプロダクトフローも向上する。 際どい質問にも答えられるし、真実を伝え、正しいことをするための自信もついてくる。そんなの生まれ持っての能力じゃんと思う人もいるかもしれないけど、これはスキルなので、練習すれば身に付けられる。
組織の中にアジャイルコーチが何人も生まれてきてグループになった場合、以上に加えて、技術、ビジネス、組織変革の専門性も必要とされてくる。一人の人間が全てに精通している必要は必ずしもない。
さいごに
白黒はっきりするこれが正解、これが間違いというのはありません。 自分の置かれているたった今その状況における目的にフィットする答えしかないのです。 まぁ。むずかしいんですけどね。 アジャイルは複雑性を簡単にしていくというものではなく、それに寄り添うものなので、複雑性とともに仕事していくのです。 最後に冷蔵庫に貼って毎日見ている文句を共有します。 「最後にはきっとうまくいく。もしうまくいってないなら、それは終わりではないということ。」 みなさんが次のステップに進むことを応援しています。
おまけ
ScrumAllianceが提供しているコーチへの道のりのリーディングリストなど。 www.scrumalliance.org
日本語で手に入りそうなものは以下